ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)
J.D.サリンジャー
白水社 刊
発売日 1984-05
1951年に『ライ麦畑でつかまえて』で登場してからというもの、ホールデン・コールフィールドは「反抗的な若者」の代名詞となってきた。ホールデン少年の物語は、彼が16歳のときにプレップ・スクールを放校された直後の生活を描き出したものだが、そのスラングに満ちた語り口は今日でも鋭い切れ味をもっており、ゆえにこの小説が今なお禁書リストに名を連ねることにもつながっている。物語は次の一節で語りだされる。
――もし君が本当に僕の話を聞きたいんだったら、おそらく君が最初に知りたいのは、僕がどこで生まれただとか、しみったれた幼年時代がどんなものだったかとか、僕が生まれる前に両親はどんな仕事をしていたかなんていう「デビッド・カッパーフィルド」調のやつなんだろうけど、僕はそんなこと話す気になんてなれないんだな。第1、そんなの僕自身退屈なだけだし、第2に、もし僕が両親についてひどく私的なことでも話したとしたら、2人ともそれぞれ2回ずつくらい頭に血を上らせることになってしまうからね――。
ホールデン少年は、教師をはじめとしてインチキなやつら(いうまでもなくこの両者は互いに相容れないものではない)と遭遇することになるのだが、こうした人物に向けられる風刺がきいた彼の言葉の数々は、10代の若者が誰しも味わう疎外感の本質をしっかりと捉えている。
私をつかまえて! きゃっ♪ ・・・じゃなかった 2007-09-09
翻訳された邦題をはじめて知ったとき,私は勝手に内容を想像した。
きっと,主人公のガールフレンドだかが, 『ライ麦畑で,私を捕まえて きゃっ♪』 みたいなことを言って主人公を誘惑して,まあ,主人公もその気になって,ライ麦畑の中で若い男女がじゃれあった挙句,草陰で初体験エッチをする,古き良きアメリカのおもひで,みたいな作品,ぐらいに想像していた。
もちろん違う。
この奇妙な題名は,主人公のセリフの中で,チラッと出ただけだったと思う。
主人公の17歳の少年は,将来の夢についてこんなことを言う:
『崖っぷちの近くにあるライ麦畑があって,そこで子供たちが無心に遊んでいるとするわな。
ライ麦畑は見通しがすごく悪いから,子供たちの中には,すぐそばに転落の危険があることも知らず,崖っぷちに向かって一直線に走ってゆく子もいるだろう。
僕はそういう子供を抱き止めて,その子が崖から落ちるのを未然に防ぎ救ってあげるような,そういう人間になりたい』
これが,ライ麦畑で崖に向かって走る子供を抱き止めてやる人,すなわち,the Catcher in the Rye である。
物語では,主人公の少年自身が崖から転落しそうになる。 つまり,人生の落伍者になり,坂道を転げ落ちるようにどんどん落ちぶれてゆくということだ。
いろんなことに憤りや疑問を感じた主人公は,物語を通じていろんな人に救いを求めるのだが,結局,どこにも彼を救ってあげられる人はいなかった。
最後に彼を救ってくれた人, つまり彼にとっての Catcher in the Rye は,彼の最愛の妹だった,というような話であった。
寝不足に二日酔い,暴力が出てくるので,読んでいる方までなんだか疲れてくるのだが,主人公とともに答えを探してさまよい疲れきった挙句に,本当のシアワセとは何か,みたいなことを最後にふと気づかせてくれるような内容だった。
だから,チルチルミチルの 『青い鳥』 や,『オズの魔法使い』 なんかとよく似ているように思う。
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